近年、医療業務の効率化が進んでいますが「IT化の波に乗るのが大変」「レセプトを扱えるスタッフがいない」と悩むクリニックも少なくありません。そんなときに活用できるのが、レセプトチェックの外注サービスです。本記事では、外注でどこまで任せられるのか、利用のメリットや注意点について解説します。
レセプトチェックを外注に委託したらどこまで依頼できる?
レセプトチェックの外注とは、クリニックの医療事務が行っているレセプト関連業務を専門業者に委託するサービスのことです。委託範囲は業者によって異なりますが、算定項目や病名の抜け漏れ、記載ミスなどを専門スタッフがチェックする「レセプト点検」や、不備箇所を指摘し、修正内容をクリニックに共有する「修正・フィードバック」がおもな作業内容です。
ほかにも、必要に応じて国保連合会や社会保険支払基金への請求処理を代行したり、算定漏れや過去データを分析し、院内スタッフへの教育サポートを行っている外注業者もあります。委託方法もさまざまで、レセプトデータをオンラインで送るタイプや、担当者がクリニックに訪問して作業を行うタイプなどがあります。まずは、委託範囲や対応体制を確認し、自院に最適な形で利用を検討するとよいでしょう。
レセプトチェックを外注するメリット
レセプト業務の外注には、多くの利点があります。ここでは代表的な7つのメリットを紹介します。
算定漏れによる損失を防げる
プロのレセプト点検担当者が病名・算定項目の抜けを徹底的に確認してくれるため、これまで取りこぼしていた請求分を回収できる可能性があります。たとえば「特定疾患処方管理加算」では、初診月から該当傷病名がある場合、特定疾患以外の処方でも算定が可能です。
また「特定疾患指導料」は初診日から1か月経過後に算定できます。こうした細かな算定ルールを熟知した専門スタッフが点検することで、算定漏れや誤記の見逃しを防ぐことができるのです。結果的に、クリニックの収益向上にもつながるでしょう。
返戻・減点が減り、再請求の手間が軽減される
レセプトの記載不備や誤りが少なくなることで、保険者からの返戻・査定が減ります。再請求作業が減ることで、スタッフの残業や業務負担を軽減できるでしょう。
国保連合・支払基金からの信頼が向上
正確なレセプト提出が続くことで、医療機関としての信頼度が上がるのもメリットのひとつです。不備の多い請求は信用問題にもつながるため、外注で精度を高めることは大きな意味をもちます。
スタッフが診療・患者対応に専念できる
レセプト業務は月末・月初に集中し、スタッフの負担が非常に大きくなりがちです。外注することで、スタッフは診療サポートや患者とのコミュニケーションに専念でき、医療の質の向上にもつながります。
月末月初の残業を減らせる
外注先のスタッフはレセプト処理に熟練しており、スピーディかつ正確な対応が可能です。そのため、スタッフの残業や休日出勤を減らすことができます。
経験の浅い事務スタッフでも採用しやすくなる
レセプト点検や統括の知識をもつ人材を採用するのは難しく、医療事務の人手不足が続いています。外注を利用すれば、レセプト知識が浅いスタッフでも十分対応できるため、採用のハードルを下げる効果があります。
法改定時の対応負担が軽減される
診療報酬改定時には、算定要件の変更や新ルールへの対応が求められます。外注業者に委託していれば、つねに最新の知識で点検が行われるため、院内での知識アップデートに追われる必要がなくなるのも魅力です。
レセプトチェックを外注する際の注意点
便利な外注サービスですが、利用する際はいくつかの注意点もあります。導入前にしっかり理解しておきましょう。
コストが発生する
外注には当然費用がかかります。業者や委託範囲によって料金は異なりますが、月ごとの固定費やレセプト件数に応じた従量課金制が一般的です。
ただし、レセプト業務のためにスタッフが長時間残業している場合は、外注のほうが人件費より安くなるケースもあります。費用対効果を考慮して判断しましょう。
院内対応が完全になくなるわけではない
外注を利用しても、医師の最終確認や査定・返戻対応など、一部の業務は院内で行う必要があります。すべてを業者任せにできるわけではない点に注意が必要です。
委託内容・範囲をしっかり確認する
業者によってサービス範囲は異なり、レセプト点検のみ対応のところもあれば、会計入力・オンライン請求まで対応するところもあります。
契約前に、どの工程を任せられるのか、データのやり取り方法はどうかを明確にしておきましょう。
自院の状況に合った方法を選ぶ
レセプト代行は万能ではありません。たとえば、レセプト業務全体を外注するよりも、レセプトチェックソフトを導入して院内で効率化を図る方が適しているケースもあります。
「人手不足を補いたいのか」「精度を高めたいのか」「教育を目的とするのか」など、目的に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。
まとめ
レセプトチェックの外注は、正確性の向上・業務負担の軽減・人材確保のしやすさといった多くのメリットがあります。算定漏れや返戻が多く、スタッフの残業が常態化しているクリニックほど、外注化による効果を実感しやすいでしょう。ただし、外注にはコストや業者選定の難しさも伴います。自院の課題や将来の運営方針を整理したうえで、外注・自院運用・チェックソフト導入など、最適な方法を選ぶことが重要です。レセプト業務を見直して、診療の質とスタッフの働きやすさ、双方の向上を目指しましょう。