医療機関に欠かせないレセプトチェックソフトですが、実際にはどのようなものなのでしょうか。ここでは、レセプトチェック点検の内容や、レセプトチェックソフトの詳細について詳しくご紹介します。

レセプト点検の内容は？

医療機関では、診療や投薬、手術などのさまざまな医療行為が実施されており、それぞれに全国統一の診療報酬点数が設定されています。そして行った医療行為ごとの点数を算出し、それを集計して診療報酬明細書（レセプト）を作成します。患者には自己負担分が請求され、残りの費用は保険組合などに請求される仕組みです。

この請求内容が正確であるかどうかを確認する作業がレセプト点検です。医療機関でレセプト点検を行うのは、院長や事務長、医療事務スタッフですが、さまざまな業務の中でも重要な業務のひとつであり、担当者が目視で確認する方法と、専用のチェッカーシステムを活用する方法があります。

レセプト作成自体は医療事務に関する基本的な知識があれば未経験者でも対応可能ですが、点検業務は過去の請求内容との照合や患者ごとの診療履歴の突き合わせなどが必要となり、非常に複雑な作業です。具体的には、保険点数表の算定ルールのチェックや、病名と医療行為との整合性のチェックを行います。

正確な点検を行うためには、医療制度や診療報酬に関する豊富な知識と経験が不可欠であり、病名と医療行為の整合性確認などは、医療の専門知識を持つスタッフによる目視点検が行われることも少なくありません。

点検業務に役立つレセプトチェックソフトとは?

レセプトチェックソフトとは、医療機関が作成するレセプトの内容を自動で点検し、誤請求や記載ミスを防ぐためのシステムです。ご紹介しているようにレセプト点検は複雑な業務であるため手作業では時間がかかり、ヒューマンエラーのリスクも高くなります。そこで、レセプトチェックソフトを活用することで、効率的かつ正確な点検が可能になるのです。

このソフトは、診療報酬点数表のルールに基づき、自動で請求内容を確認し、不適切な算定や病名の記載漏れ、重複請求などを検出してくれます、また、診療報酬改定にも素早く対応できるため、最新の点数ルールに沿った請求が行われているかもチェックできるのも特徴です。

レセプトチェックソフトを活用することでレセプト点検で起きやすいミスを未然に防ぐことができ、スムーズな診療報酬請求を行えるようになるでしょう。

レセプトチェックソフトでできること

さまざまなレセプトチェックソフトが開発されていますが、主軸となる機能は大きく分けて3つあります。ここでは、その内容を詳しく見ていきましょう。

病名の確認

レセプトチェックソフトには、レセプトに病名が記載されていない場合、エラーとして自動的に検出される機能があります。これにより病名の記載漏れを防ぐことができます。

また、単に記載漏れを指摘するだけでなく、算定された診療行為に対応する病名が正しく記載されているかを自動で確認する仕組みも備えています。さらに、長期間にわたり通院している患者については、過去に記載された病名を抽出し一覧で表示する機能もあり、病歴の管理を容易にしてくれるでしょう。

さらに一部のソフトでは、適切な病名候補を提案する機能を搭載しているケースもあり、入力作業の効率化や時間短縮にもつながります。

算定漏れの確認

レセプトチェックソフトを活用することで、診療報酬の算定漏れを防ぐことができます。多くのソフトでは、基本的に適用可能な算定項目を分析して適切な算定候補を表示する機能が搭載されているからです。

医療機関における保険診療では、診療報酬の点数を正確に請求することが不可欠ですが、手作業での点検ではミスが発生する可能性があります。とくに、医療事務スタッフの知識不足などが原因で病名の記載漏れが生じ、それにより本来算定できる点数が請求されないケースも考えられます。

レセプトチェックソフトを導入することで、担当者のスキルに依存することなく、確実に算定漏れを防ぐことができ、診療報酬請求の適正化が実現できるでしょう。

縦覧点検

レセプト点検業務でもとくに複雑な作業が「縦覧点検」です。これは、当月のレセプトと過去数か月分のデータを照合し、診療行為の回数や内容が適切であるかを確認する作業です。ひとりひとりの過去レセプトにもしっかりと目を通して点検する必要があり、時間も手間もかかってしまいます。

とくに頻繁に来院する患者については、カルテに間違いがないようにしておかないと、思わぬミスが生じてしまう可能性があるでしょう。その点、レセプトチェックソフトを活用すれば、検査の回数や内容に不備がないかを自動的にチェックしてくれるため、診療の経緯に辻褄があっているかどうかを効率的に確認できます。

来院回数が多いほどチェックのミスも発生しやすくなる可能性がありますが、ソフトで適切に管理や確認ができると、担当者の負担を大幅に減らすことができるでしょう。

レセプトチェックソフト導入のメリット

レセプトチェックソフトを導入することには、さまざまなメリットがあります。ここでは、そのなかでもとくに大きなメリットをご紹介するので、導入するかどうか悩んでいる方もぜひチェックしてみてください。

作業の効率化

レセプトチェックソフトを導入することで得られる大きなメリットのひとつが、作業の効率化を叶えられるということです。病名チェックや算定漏れチェックなどの点検作業を手作業で行う場合、膨大な時間がかかります。

現在も多くの医療機関が手動・目視による点検を実施しており、とくに月末には請求業務が集中することから、残業が増えるなど担当者の業務負担が大きくなる傾向にあります。このような負担を軽減し、業務効率を向上させるのがレセプトチェックソフトです。

システムを活用することで、点検作業の大部分を自動化でき、短時間での処理が可能になります。そのため作業時間や人手不足を課題とする病院やクリニックにはとくにおすすめといえるでしょう。最終確認は人の目で行う必要がありますが、それまでの手作業を削減できるだけでも十分に導入する意味はあるといえます。

人為的なミスを防ぐ

レセプトチェックソフトを導入することで、診療報酬請求の正確性が向上し、記載ミスや算定漏れといった、人為的なミスを防げるというメリットもあります。病名が診療内容と適合していない場合、返戻される可能性があり、修正作業に多くの時間が割かれてしまいます。

レセプト点検の返戻対応は医療従事者にとって大きな負担となりますが、ソフトを活用することで病名や診療内容の整合性を事前にチェックし、記入漏れや誤りを未然に防ぐことができ、その負担を大幅に低減してくれるでしょう。人為的なミスは、ミスをしてしまった医療従事者の心理的ストレスになってしまうこともあり、最悪の場合は退職などにつながってしまう可能性も考えられます。

レセプトチェックソフトを使用することでレセプトの正確性が向上し、返戻率の低下が実現すると、作業の負担を減らせることはもちろん、心理的ストレスの軽減にもつながり、現場のモチベーションを保つ役割も期待できるでしょう。

業務の標準化

本来、レセプト点検はレセプト業務に精通した職員が行うべき作業ですが、さまざまな事情から、それが叶わない現場も少なくありません。そのような現場でもレセプトチェックソフトを導入することで、院内スタッフの誰でも一定の品質で点検を行うことが可能になります。

とくに、レセプト担当者が1人しかいないなど小規模なクリニック・診療所の場合は、担当者が休暇を取る場合や急に退職した際に業務が滞ってしまう可能性があります。そのようなリスクを防ぎ、万が一の場合でも業務が滞ることなく継続できる点は、レセプトチェックソフトを導入する大きなメリットといえるでしょう。

昨今ではあらゆる医療機関で人材不足が叫ばれていますが、レセプトチェックソフトを活用すれば、どのスタッフが担当しても同等のクオリティを担保することができ、加えて高い精度を保つこともできます。スタッフひとつひとりの作業負担や心的負担を減らすためにも、レセプトチェックソフトを導入するのはおすすめです。

「レセプトチェックソフトを導入する際に意識することは何ですか。」Webアンケートで調査！

医療機関や調剤薬局では、請求業務の効率化と正確性向上のためにレセプトチェックソフトを導入するケースが増えています。しかし、実際に導入する際には、どのような点を重視すればよいのでしょうか。今回、レセプトチェックソフトの導入に関するWEBアンケートを行ったので、結果を確認していきましょう。

第1位は「コストパフォーマンス」でした。

レセプトチェックソフトの導入にあたり、最も重視されたのはコストパフォーマンスでした。ソフトの導入費用や月額料金はもちろんのこと、運用コストや追加オプションの費用なども考慮する必要があります。また、導入することで業務効率がどれだけ向上し、コスト削減につながるのかを事前にシミュレーションすることも重要です。価格だけでなく、費用対効果をしっかりと見極めることが求められます。

第2位は「確認のしやすさ」でした。

レセプトチェックソフトを導入する目的のひとつは、ヒューマンエラーを減らし、請求業務の正確性を高めることです。そのため、操作画面が直感的で使いやすく、チェック機能が分かりやすいことが重要視されています。また、エラーの指摘や修正のサポート機能が充実していると、よりスムーズに業務を進めることができます。スタッフが短期間で習得できるよう、操作性の良さも大切なポイントです。

第3位は「機能の充実度」でした。

レセプトチェックソフトには、基本的なエラーチェック機能のほかにも、多様な機能が搭載されているものがあります。たとえば、過去の請求履歴と照らし合わせてエラーを自動検出する機能や、最新の保険制度に対応するためのアップデート機能があるかどうかも重要です。また、電子カルテや会計ソフトとの連携機能があると、より効率的に業務を進めることができます。自院の業務フローに適した機能を備えたソフトを選ぶことが重要です。

以上がアンケートの結果となります。レセプトチェックソフトを導入する際は、コストパフォーマンス、確認のしやすさ、機能の充実度の3点を特に意識することが重要です。これらのポイントを踏まえ、業務に最適なソフトを選択し、スムーズな運用を目指しましょう。

レセプトチェックソフトを選ぶ際のポイント

数多くのレセプトチェックソフトが提供されていることから、どのような基準でソフト選びをすればいいかわからないと感じている方もいるでしょう。ここでは、そんな方のために、レセプトチェックソフトを選ぶ際にチェックしたいポイントをご紹介します。

コストパフォーマンス

レセプトチェックソフトを導入する場合、気になるポイントとしてコスト面が挙げられます。ソフトによって月額利用料がかかるものや、従量課金制を採用しているものなど、料金体系が異なります。そのため、自院のレセプト点数や業務量に応じて、無理なく継続できるプランを提供しているソフトを選ぶのがおすすめです。

また、ランニングコストだけでなく初期費用も確認すべきポイントです。クラウド型のソフトでは初期費用が抑えめであるケースが多い一方、オンプレミス型（自社サーバー設置型）のソフトでは、導入時に高額な費用が発生することがあるため、コストを意識しているのならクラウド方がおすすめです。

さらに、無料トライアル期間の有無もチェックするとよいでしょう。トライアル期間があるソフトであれば、導入前に実際の操作性や機能を試すことができ、自院に適しているかを判断しやすくなります。費用対効果を最大化するためにも、コスト面を比較検討しながら最適なソフトを選ぶことが重要です。

確認のしやすさ

レセプトチェックソフトを選ぶ際には、操作性や画面の見やすさも重要なポイントです。業務効率を向上させるためには、誰でも直感的に操作でき、必要な情報がすぐに確認できる設計になっていることが求められます。

具体的には、エラーや修正点が一覧で表示されるか、視認性の高いレイアウトになっているかを確認するとよいでしょう。たとえば、頻繁に利用する機能がすぐに見つけられるようになっていたり、色分けやアイコン表示によって、修正が必要な項目を一目で識別できるソフトであれば、点検作業の負担を軽減できます。また、レセプトの詳細画面や点検結果がシンプルに整理されていれば、作業の効率化につながるでしょう。

さらに、検索機能やフィルタリング機能が充実しているかも重要です。特定の診療行為や病名を素早く検索できると、修正作業がスムーズになります。レセプト点検業務は月末に集中することが多いため、短時間で正確に確認できるソフトを選ぶことが、業務の負担軽減につながります。

カスタマイズのしやすさ

独自のチェック項目を設定できるか、またその設定が簡単に行えるかといったカスタマイズ性にも注目してレセプトチェックソフト選びをしましょう。医療機関ごとに診療内容や請求の特徴が異なるため、標準搭載されたチェック機能だけでなく、個別のニーズに応じたカスタマイズができるソフトを選ぶことで、より精度の高い点検が可能になります。

たとえば、特定の診療科目に合わせたチェックルールの追加や、病院独自の基準を反映した点検設定が可能かを確認するとよいでしょう。また、設定作業が煩雑だと運用の負担が増えるため、直感的な操作で簡単にカスタマイズできるかも重要です。

近年では、AI学習機能を搭載したレセプトチェックソフトも登場しており、たとえば自動で適切なチェック項目を提案する機能を備えたソフトもあります。このような機能を活用することで、カスタマイズの手間を軽減し、より効果的なレセプト点検が可能になります。導入時だけでなく、継続的な運用のしやすさも考慮し、柔軟に設定を変更できるソフトを選びましょう。

機能の充実度

レセプトチェックソフトは、病院の規模に適した機能が搭載されているかを確認することも重要です。小規模なクリニックから大規模な医療機関まで、必要とされる機能は異なるため、自院の業務内容や範囲に適したソフトを選ぶことで、効率的な運用が可能になります。

なかでも、電子点数表への対応は必須の要件といえるでしょう。診療報酬点数は定期的に改定されるため、ソフトが最新の電子点数表と連携し、自動更新されるかどうかは重要なポイントです。対応しているソフトであれば、改定後すぐに適切な点数で算定され、誤請求を防ぐことができます。

また、診療報酬支払基金が定めるコンピュータチェックに関する公開基準に対応しているかも大きなポイントです。この基準に準拠しているソフトであれば、請求時のエラーを最小限に抑えることができ、レセプト返戻や査定による業務負担を軽減できます。

レセプトチェックソフトを導入するのなら、このどちらにも対応している機能が搭載されているものを選ぶのがおすすめです。

サポート体制

導入後のサポート体制も事前にチェックしておきたい重要なポイントのひとつです。とくに、医療機関の業務は多忙かつ多岐にわたるため、システムの不具合や操作方法の不明点が生じた際に、迅速に対応してもらえるかどうかが鍵を握ります。

サポート体制が充実しているソフトでは、電話やメールによる問い合わせ対応のほか、リモートサポートを提供しているケースもあります。リモートでの対応が可能であれば、トラブル時にもスムーズに問題を解決でき、業務の遅延を最小限に抑えることができて安心です。

とくに画面を共有してのリモートサポートがあると、解決までの時間を短縮することができ、不安を感じにくいはずです。ぜひ予期せぬ自体が起きても柔軟かつ素早く対応してくれるソフトを導入し、大きなトラブルを防げるようにしておきましょう。

最新の情報が反映されているか

レセプト点検業務を正確に行うためには、最新の審査基準や診療報酬改定に迅速に対応できるソフトを選ぶことが不可欠です。各審査機関では審査基準の統一化が進められていますが、現状では地域や組織によって審査基準に若干の違いがあるため、最新の情報を反映できる仕組みが重要になります。

この点で、クラウド型のレセプトチェックソフトは、常に最新の基準や点数表にアップデートされるため、審査基準の変化に即座に対応できるメリットがあります。オンプレミス型の場合、アップデート作業が必要になることが多いため、運用の手間を考慮して、どちらのタイプが適しているかを検討しましょう。

最新の医療制度や診療報酬の変更に迅速に対応することで、請求ミスや返戻のリスクを低減し、適正な診療報酬の請求を継続できる環境を整えることができます。

レセプトチェックソフトの利用イメージ

レセプト業務は、わずかな記載ミスでも返戻や査定の原因となるため、正確さが求められます。そうした中で注目されているのがレセプトチェックソフトの活用です。ソフトを導入することで、人の目だけでは気づきにくいミスや記載漏れを自動的に検出でき、業務効率と精度の向上が期待できます。

実際の利用の流れは以下の通りです。

・レセプトを通常通り作成
・ソフトにデータを取り込み自動チェック
・警告内容を確認し修正
・再チェック後に提出

初回は警告が多く出る場合もありますが、それらをもとに職員や医師がミスの傾向を学ぶことで、次月以降の精度が自然と向上します。継続的な運用により、警告数の減少とともに、人的負担の軽減も可能になります。

レセプトチェックソフトは、現場の負担を減らしながら、確実なレセプト提出をサポートする心強いツールです。

レセプトチェックソフトの導入で業務の効率化を実現しよう

レセプトチェックソフトを導入することで、業務の効率化、正確性の向上、業務の標準化を実現し、医療機関の負担を大幅に軽減することが可能になります。現在さまざまなソフトが開発されていますが、自院の運用に適したソフトを選び、よりスムーズなレセプト点検業務を実現できるようにしましょう。