クリニックでは、受付や会計、診療補助など多岐にわたる業務を限られた人員でこなす必要があります。そのため、些細なことやちょっとしたミスが業務全体の遅れやトラブルにつながることも珍しくありません。本記事では、クリニック業務を効率化し、ミスを減らすための基本ポイントと便利なツールを紹介します。
業務改善のカギはスタッフの能力の均一化？
業務改善の第一歩は、スタッフの能力を均一化することです。一見すると「全員が同じことをできるようにするのは非効率では？」と思うかもしれませんが、実際には長期的な視点で見ると大きなコスト削減につながります。
クリニックの業務は非常に多岐にわたり、受付・会計・診療補助・レセプト業務など、日々さまざまなタスクを限られた人員で処理しなければなりません。そのため「優秀なスタッフに任せれば早い」と考える医院も多いでしょう。
しかし、特定のスタッフに業務を任せすぎると業務が偏ってしまい、そのスタッフ以外誰も業務に手をつけられない「聖域化」や特定のスタッフだけがわかる業務が発生する「スタッフの人間国宝化」が起こりやすくなります。
これを防ぐのに有効なのが、誰でも同じように業務ができる状態をつくる、いわゆる「能力の均一化」という考え方です。能力の均一化が進むと、特定の人に業務が集中せず、誰でも同じクオリティで対応できたり、スタッフ間の協力体制が整い、チームワークが向上するというメリットが期待できます。
また、スタッフが万一体調不良などで出勤できなかったとしても業務が滞らないので安心です。さらに、属人化を防ぎ、不正やミスの早期発見につながるので、クリニックの信頼性も高まるでしょう。
業務が属人化していると、退職や休職が発生した際に教育コストが膨らむほか、引き継ぎ時のミスや混乱も増えるリスクが考えられます。効率的にクリニックの業務を進めるためにも、クリニック全体で優秀なスタッフに頼らなくてよい環境を整えることが大切です。
能力の均一化を進めるためのポイント
前項ではスタッフの能力を均一化する必要性を解説しました。しかし、どのようにしてスタッフの能力を平均化すればよいのでしょうか。ここでは、とくに効果的な3つのポイントを紹介します。
ひとつひとつのタスクを細分化する
一見難しく見える業務でも、実は複数の小さなタスクの積み重ねです。たとえば、会計業務を例に挙げると「診療内容の確認 → 保険点数の算定 → 請求書の発行 → 会計処理」というように細分化できます。
タスクを細かく分けることで「どの工程でつまずくのか」「どの作業に知識が必要なのか」が明確になります。業務を「線」ではなく「点の集合」として捉えることで、誰でも理解しやすく、教えやすい仕組みづくりが可能になります。
マニュアル化を進める
タスクを細分化したら、それをマニュアル化しましょう。とくにおすすめなのが、新人スタッフにマニュアルの作成や更新を担当させることです。新人が作成することで、「どこが分かりにくいのか」を把握でき、マニュアルの改善につながります。
また、自分で説明文を書くことで業務理解も深まるため、教育効果も抜群です。マニュアルはつねに最新状態を保ち、誰でもすぐにアクセスできるようにデジタル化（共有フォルダやクラウドツールなど）しておくとより効果的です。
マルチタスク化で柔軟な運営を可能にする
業務の平均化を進める最終目標は、誰でもどの業務もこなせるマルチタスク体制を構築することです。マルチタスク化が進むと、ピーク時の人員配置を柔軟に変更できるだけではなく、誰かが急に休んでもほかのスタッフが代わりに対応できます。
さらに、チーム全体で業務を支え合えるため、休みたいときに無理をせず休める環境になり、スタッフの精神的な負担も軽減するでしょう。この仕組みを実現するには、まずタスクの可視化とマニュアル化が不可欠です。業務内容を共有し、教育や引き継ぎがスムーズにできる環境づくりを行いましょう。
業務のミスを減らしたいならこのツールがおすすめ！
ミスをすると二度手間になり、スムーズなクリニック運営が難しくなります。そのため、近年のクリニック運営においては、デジタル化・医療DXの推進が業務改善の大きな鍵となっています。
システムの導入で、データ管理や予約対応などの手間を大幅に削減できるうえ、人的ミスの防止にもつながります。ここでは、業務改善・ミス削減に効果的な4つのツールを紹介します。
診療予約システム
Webやアプリから予約を受け付けるシステムです。電話対応の負担を減らせるため、受付スタッフの業務効率が大幅に向上するでしょう。また、患者が自分で予約を管理できるため、予約忘れや重複予約のリスクも軽減できます。来院時間の分散にもつながり、待合室の混雑も防止できます。
電子カルテ
紙カルテに比べ、検索性・保管性・安全性の面で大きなメリットがあります。カルテの入力や閲覧がかんたんになり、患者情報を一元管理できるため、診療スピードや正確性が向上します。また、診療データをもとにした分析も容易になり、医療の質向上にも貢献します。
Web問診票
患者が来院前にスマホやPCで問診内容を入力できるシステムです。来院当日の記入作業を省けるため、受付業務がスムーズになり、待ち時間の短縮にもつながります。入力内容は電子カルテと連携できるため、医師も事前に情報を把握して診察に臨むことができます。
レセプトチェックソフト
医療機関の業務の中でもとくに重要で、かつミスが許されないのがレセプト点検業務です。診療報酬請求の誤りは返戻や減額につながり、経営に直接影響を及ぼす可能性があります。
そこで導入を強くおすすめしたいのがレセプトチェックソフトです。このソフトは、診療報酬点数表にもとづき自動で請求内容を点検し、計算ミス、病名と医療行為の整合性ミス、重複請求、記載漏れなどを自動で検出します。
ソフトを活用すればこれらを自動化でき、ヒューマンエラーを大幅に削減できるでしょう。さらに、診療報酬改定にも自動で対応するため、つねに最新のルールに沿ったチェックが可能です。業務の正確性とスピードを両立できるため、医療事務スタッフの負担軽減にもつながります。
まとめ
特定スタッフの能力に頼りすぎると、不在時に業務が滞ったり、不正に気づけなかったり、スタッフ間のパワーバランスが崩れるなどの問題につながります。クリニックの業務改善を進めるには、まずスタッフ間の能力差をなくし、業務を見える化することが重要です。タスクの細分化・マニュアル化・マルチタスク体制を整え、チーム全体で支え合う仕組みを作りましょう。そして、業務効率とミス削減を両立するためにはデジタルツールの導入が不可欠です。とくに、ミスが経営に直結するレセプト点検業務では、レセプトチェックソフトの導入がもっとも効果的です。属人化を防ぎながら、誰でも正確に・効率的に業務を進められる環境を整えることが、これからのクリニック経営における最大の業務改善策といえるでしょう。
