
医療機関が診療報酬を請求するためには、各保険機関へレセプトを提出しなければいけません。この内容に不備があると、修正のためにレセプトが差し戻されてしまいます。このことを、レセプト返戻と呼びます。できれば返戻されないようにしたいものですが、そのためにはどんなことに気を付ければよいのでしょうか。
レセプト返戻の原因とは?
レセプト返戻は、なぜ発生するのでしょうか。レセプトとは、医療機関が患者に対しておこなった診療内容を1か月分まとめて書類にしたもので、ここに記載された内容を元に医療機関に報酬が支払われます。
レセプトには、患者の名前などの情報や保険証の情報、傷病名や治療・処方箋内容などが記載されています。非常に多くの情報が記載されるため、時には記入漏れや誤った内容を記載してしまうことも多いです。
そのような不備があった場合に、医療機関と各保険機関の間に立つ審査支払機関からレセプトを差し戻されてしまいます。レセプト返戻の原因には、色々なものがあります。
たとえば、患者が提示した保険証の有効期限が切れている、氏名や生年月日等に相違がある、おなじ月におなじ傷病内容で複数の医療機関の診療を受けた場合などは、返戻の対象となることが多いです。
また、医療機関側が原因である場合、傷病名に対して有効な処置や処方でなかった場合や、点数計算が間違っている場合にも返戻の対象となってしまいます。
返戻を防ぐための確認手順
このようにレセプトが差し戻されてしまうと、医療機関は医療報酬を受け取れる日がどんどん後に延びてしまいます。レセプト返戻をできる限り減らすことが、医療機関の課題です。
そのためには、レセプトチェックを正確に行うことが重要です。レセプト作成時には、主にレセコンを使うことになります。そのため、日々の入力内容に誤りがなければレセコンで自動的に作成された内容にも誤りは発生しづらくなります。
受診時に情報を入力する際は、患者の名前、生年月日、性別、傷病内容などを正しく入力するようにしましょう。また、おこなった医療行為は漏れのないように確実に入力することも大切です。
漏れがあると、点数計算が正しくおこなわれないため、返戻の原因となってしまいます。その際は、傷病内容と処置・処方箋内容にズレが生じないようにする必要もあります。
医療事務従事者がひととおりのチェックを終えたら、最後に医師に確認してもらいましょう。もしそこで不備があった場合は、必要な修正をおこない、再度医師の承認を得ます。
レセプト返戻されないためにミスを防ぐコツ
レセプト返戻をできる限り減らすためには、レセプトチェックシステムを利用するのもひとつの手です。レセプトチェックシステムは、作成したレセプトを自動的に点検し、誤りや不備のある箇所を教えてくれます。
さらに、修正の候補を提示してくれるようなシステムもあります。どうしても、人の目ではすべての不備を見つけることは難しいものです。膨大な数のレセプトを扱う医療機関では、繁忙期も月末から翌月初旬までの一部の期間で作業を終えなければいけません。
そのため、心身ともに疲労した状態でチェックをおこなっています。そのような従業員の負担を軽減する目的でも、レセプトチェックシステムは利用されているのです。システムを利用することにより、使い方さえ教育していれば多くの人数で作業を進めることが可能です。
少人数に負担が集中することを防ぎ、フレッシュな状態で作業をおこなうことにより、効率をアップすることが見込めます。ただし、導入には時間や費用がかかります。必要な日程から使い始めるためには、早めに準備を整える必要があります。
費用に関しては、一度購入してしまえばずっと使えるものから、月額課金制、別途追加料金が必要になるものなど様々です。各社から色々なシステムがリリースされているため、事前に情報を細かく調べておく必要があります。
まずはどのようなところで不備が発生しているかを見極め、その原因を究明しましょう。同じ不備を発生させないためにはどのような方法が有効的か検討し、実践してみましょう。
実践した結果、どのような効果が出たか、どのような改善が必要かを挙げ、更なる改善案を出すことでよりよい作業環境を作り出すことができます。必要に応じてレセプトチェックシステムの導入や勉強会の実施を検討し、ミスが少なく作業をスムーズにおこなえる環境づくりに努めましょう。
まとめ
レセプト返戻は、医療機関にとって大きな痛手です。提出したレセプトがスムーズに受領されるように、事前のチェックが重要となります。よく原因となる箇所に目星をつけておき、まずはその箇所に不備がないかをしっかり確認しましょう。また、思いがけないところに不備が出てくる可能性もあります。人の目ではチェックしきれないようなところは、レセプトチェックシステムを利用することも検討してみましょう。日々の業務フローを洗い出し、どこをどのように改善すると効率がよくなるのか、複数人で話し合うことも有効的な手段です。レセプトが返戻されて診療報酬の受け取りが遅くならないよう、作業環境の改善をおこなっていきましょう。